手数料・スリッページを無視したバックテストはなぜ危険か
2026年4月
バックテストを最初に組むと、多くの場合 手数料 0・スリッページ 0 で結果を眺めます。ここから現実に近づけずに戦略を選ぶと、特に取引回数の多い戦略で大きな誤解を招きます。
3つのコスト要素
| 要素 | 典型値(日本株) | 影響度 |
|---|---|---|
| 証券会社手数料 | 0〜0.1% / 片道 | ネット証券では小さい |
| スリッページ | 0.05〜0.2% / 片道 | 流動性と板厚に依存 |
| 売買価格のタイミング | ギャップで 1% 以上動くことも | 寄成・引成で差が出る |
ネット証券各社のプランにより手数料は大きく変わりますが、スリッページは自分で見積もるしかない隠れコストです。
スリッページの見積もり方
スリッページは、「理論価格と実約定価格の差」 です。シンプルな見積もり方は以下です。
- 出来高 / 板厚比: 売買ロットが板厚の何割かで推定
- ATR ベース: ATR の 5〜10% をスリッページに設定
- 固定 bps: 日本株の流動性上位なら片道 3〜10bps、中小型なら 20bps 以上
保守的には ATR ベース + 板厚考慮 が現実に近くなります。
コストが戦略選択に与える影響
短期売買戦略ほど、コストで順位が入れ替わります。例えば以下のようなケースです。
- 手数料 0 なら CAGR +15% / 取引回数 500回
- 手数料片道 0.1% を入れると CAGR +5%
- スリッページ ATR 10% を加えると CAGR -3%
つまり コスト前は黒字、コスト込みでは赤字 の戦略が実在します。これを見極めないまま本番投入すると、机上の優位が現実では逆転します。
ティックサイズとギャップ
日本株はティックサイズが価格帯で階段状に変化し、寄付きのギャップ も日常的に発生します。寄成発注を前提にしたバックテストは、ギャップ部分を吸収しているのか否かを確認しておきましょう。
落とし穴
- コストモデルを厳しくしすぎて全滅: 過度に保守的だと、実際には機能する戦略を捨てるリスク
- 銘柄カテゴリを分けずに一律設定: 大型株と新興株でスリッページ係数は本来異なる
- デイ・スイング・ポジションで扱いが違う: 保有期間が長いほど相対的にコストは小さくなる
QuanTest で試す
QuanTest では片道手数料・スリッページをパラメータとして設定できます。まず コスト 0 → 片道 0.1% → ATR 連動 の 3 パターンで同じ戦略を走らせ、順位変動があるか確認するのが最短です。
戦略比較の考え方は こちら にまとめています。
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本記事は教育目的の解説であり、特定の戦略の収益性や将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。